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長いテーブルに数々の料理が所狭しと並んでいる。どれもこれも食欲をそそり、エトは両手にナイフとフォークで完全武装している。
「うまい」
右の料理をぱくり。
「おいしい」
左の料理をぱくり。
「素晴らしい」
手前の料理を平らげる。
エトが通されたのは、本来、集会等に使われる広めの部屋だった。金細工の大きな燭台が立ち並び、ゆらゆらと炎が揺れている。テーブルには山のようなご馳走や珍味が続々と置かれていった。羊のステーキから、羊の脳みそ。新鮮な野菜に、昆虫のフライ。飲み物やデザートも充実しており、エトは大満足だった。
「そろそろじゃな」
最後に、残っていた果物の欠片を、エトが口に放り込んだのを見るや否や、モリーは待ち切れずにそう言った。エトは自分の身長ぐらいある椅子にぷはー、とゆったり腰掛け、興味無さそうにその方向を見る。
「少し休んでから」
広場の隅には、すっかり怯えた羊が一群れと、マイペースな牛が何頭かひしめきあっていた。
「少しとはどのくらいじゃ」
羊の透明な目玉は、とっくに濁り、鳥のように身震いしている。
「少しとは後少し」
牛はそんな羊を尻目に、尻尾でうまくバランスを取りながら生きている。
「モリーは最近食べ過ぎ。ダイエットを推薦する」
「ぬかせ。後で儂を頼っても助けてあげないわいもーん」
「わいもーん?」
「わいもんとはまさにわいもん」
「……早く済ませて」
よしよし、とモリーは声を弾ませ、エトは渋々眼帯を取った。
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