可笑しな戯曲

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     そのとき、ありすは困っていた。  ありすは引っ込み思案のため、目の前で困っている人がいても、手を差し伸ばす勇気がない。否、話しかける勇気がない人なのである。  そのため、声をかけるべきか悩んでいた。 (……病院内で迷ってるのかな? 頻りに目が彼方此方(あちこち)動いてる……)  女の子は車椅子に乗っており、足が不便そうな面持ちで、釣り目がちな目が少し下を向いていることから狼狽しているように思える。  ありすは声をかけることに決心した。 「あの……目的の場所まで車椅子押しましょうか……?」 「あ、お願いします」 「……場所は?」 「精神科です」 「え……?」  ありすは、少女が車椅子に乗っているからてっきり外科に通院していると思っていたので疑問の声が漏れてしまった。 「失礼、貴方は看護婦さんですか?」 「え……いえ、実習に来ている看護士です……」 「迷惑かけてすみませんね」 「はい……え、いえ。大丈夫ですよ!」
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