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「はい、この中に入って」
「それは大き過ぎる!」
「じゃあこれ?」
「いっちゃん。それバッグじゃなくて! タッパーじゃん!」
夜(勿論時間帯ではない)に叩き起こされ、バッグ選出中なわけだが、どれも気に入ってはくれない(タッパーを気に入ったら人としてどうかと思うけれど)。
「だから僕はいっちゃん愛用のバッグが良いって言ってるでしょ?」
「いや、良いんだけどさ……」
愛用のバッグに猫の毛が入るのが嫌なのだが、仕方ない。
私は中のプリント類や教科書を外に出し、タオルを敷き詰めてから夜を入れた。
「うわっ。暗い……」
当たり前だ。
病院へ行くまで極力動かさないように撤することに決め、ゆっくり歩いていたのだが、電車に乗り終わったところで夜はギブアップを洩らした。
「酔う……酔う……」
私は夜をバッグから出し、抱えて持っていくことにした。
「バッグって凶器……」
「単に我慢が足りないだけでしょ」
「反論する気も起きない……」
腕の中でぐてーとする夜。止まってあげたいのだが、座るところがない。
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