想い出

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今、本テスト最後の教科である数学の回答用紙を 先生が一名ずつ名前を呼びながら配っている。 この結果次第で夏休みの半分を学校で過ごすはめになるだけに まわりは重々しい空気が流れている。 名前を呼ばれた柚子は緊張したおもむきで回答用紙をうけとると 一瞬にして満面の笑みとなり、 私に向かってVサインをした。 「瀬野!」 「はいっ!」 人一倍大きな返事をして立ち上がり、 彼が先生の前に小走りで近づいた。 「残念。お前は追試組な。」 「マジで?!少しはまけてくれよぉ」 頭を抱える彼に笑いながら先生が言った。 「ちょっとまけたくらいじゃ追試を免れんだろ、お前は(笑)」 クラスに大きな笑いが起こった。 「ひでぇなぁ~」 そういいながら、彼はため息をつき、 静かに席についた。 やっぱり彼は凄い。 どんな時でもクラスを明るくする。 なぜか幸せな気分になり、つい頬を緩ます。 「仲村!」 先生が私の名前を呼んだ。
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