想い出

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彼のまっすぐな視線から目が離せなかった。 何か言わなきゃ、何か・・ 伝えたいことはたくさんあるのに 何一つ言葉にならない。 なんて言ったら伝わるんだろう。 私は君の・・ 一番そばにいたいだけなのに・・ よほど私が苦しそうな顔をしていたのか 彼は私から視線を外し、一言、 ごめん、と言った。 「変なこと聞いてごめん。」 謝らなきゃいけないのは私なのに・・言葉にならない。 本当に泣きたくなってきたけど 今泣くのは、更に彼に誤解されてしまう気がして、グってこらえた。 そんな私に彼が話を続けた。 「果奈がしたいようにしたらいいよ・・ ただ、俺達幼馴染みなんだし、頼りないかもしれないけど、 なんかあったら頼ってくれていいから。」 そう言って私に笑顔を向けた彼が フィナーレの花火に照らされてなのか、 いつも以上に眩しく感じられ、 嬉しいような悲しいような、 なんとも言えない気持ちでいっぱいになった。 なんとか言葉を返そうと出てきた言葉が・・ 「・・ありがとう」 情けなくて泣きそうになった。 そんな私に 「帰ろうか」 そう言った彼に連れられ、家へと帰っていった。 その間、何を話したかは全く覚えていない。 ただ・・ 彼の手の温かさだけは今でも 胸にしみて思い出される。
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