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始めのうち、ドライヤーはなんの変化も見せず、モーター音が唸るだけだった。
「おかしいなぁ…。」
秋の予測なら、ティッシュが燃え、火炎放射機のように炎を吐き出すと思っていたからだ。
そして、秋はティッシュが詰め込まれた部分を覗き込んだ。
その刹那、奥で燃えていたティッシュが一気に火力を上げ、熱風と共に火の粉が外へ飛び出した。
顔を近づけていた秋は、前髪とまつげがチリチリに焦げ、手に軽い火傷を負った。
顔に火傷を負わなかったのは、不幸中の幸いだろう。
「待ってよお兄ちゃん~!」
階段を駆け上がってくる楓
ちなみにその時家にいた幼い楓は
「じごうじとく、だよおにいちゃん。」
と言い、前髪とまつげをみて、クスクスと笑いながら手の火傷の手当をしてくれていたのを覚えている。
あの頃からすでに、楓は世話が得意だったな…。
「お兄ちゃん…怒ってる?」
上目使いでみる楓のその姿が、小さい頃の面影を思い出させる。
「別に怒ってない…。」
こうゆう時は、虐める気にもならない。
「でも…」
「気にしてるなら…Realでの俺のレベル上げ…頑張ってくれよ?」
そう言って、俺は自分の部屋に入っていった。
ドア越しから、元気のいい妹の返事が聞こえた。
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