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「お兄ちゃん……。」
背中から刺すように響くその声に、ビクッと反応する。
恐る恐る振り向くと、楓がマギの携帯を覗くように立っていた。
「…しまった。」
「お兄ちゃん…もしかして…さっきの人…。」
バレてしまったか…。
額に妙な汗が浮かぶ。
「彼女さんだったり!?」
「ハァ!?」
的を射ぬ楓の言葉に、マギは驚き絶句した。
「でもさっきの人、男性だったよ!?ナンパ防止?……でも、格好がすごく悪趣味だったよ!?」
一人慌てふためく楓に、マギは溜め息をつく。
「あのな…あいつは女なんかじゃない。れっきとした男だ。」
「え?じ、じゃあまさかお兄ちゃん…。」
「おおっと、妹よ勘違いするな。俺はアイツと好き好んで付き合ってなどいない。勝手について来るだけだから。」
我ながら上手い。
これなら俺の威厳を下げずに誤解を解ける!!
しかしその言葉を聞いた楓の行動は、俺を驚愕させるものだった。
「……………ッツ!!」
少し間をおき、楓はマギの手を引き、弾かれたように店から飛び出した。
「なっな!?なんだよ!?いきなりどうした!?」
「いいの!お兄ちゃんの事、楓が守るから!!」
握られているマギの手には、熱と力が込められていた。
まさか…自分がついた嘘があんな災害に繋がるとは…マギはまだ知るよしもなかった…。
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