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楓に引かれ店の外に出たが、行き交う人混みにノウェの姿は捜せなかった。
「お兄ちゃん!さっきの人、フレンドに登録してるの!?」
凄まじい威圧でマギに迫る楓。
「あ、あぁ…入ってるよ…。」
「じゃあ、まだオンしてるか見て!早く!」
あまりにも130センチの少女が怖く、マギは慌てて携帯を取り出し、【フレンド】を開く。
「ま、まだRealにいる。…ど、どうすんだ?」
「まだいるのね…。Realをプレイするにもログアウトするにも、まずは渋谷駅に行かなきゃいけない。お兄ちゃん!上に上がるよ!!」
またもや腕を引かれ、来た道を戻る。
しかし、人混みが邪魔で上手く進めない。
「邪魔よ!!どいて!!」
それをお構いなしに跳ね退ける少女。
始まってしまった…
楓の通称、兄LOVEモード…。
昔からそうだ。
俺が絡むと楓は異常なほど周りがみえなくなる。
秋の小さい頃、家に仲がよかった女の子の友達を連れてきた時、楓は同じように周りが見えなくなり、その子にたいする悪戯をやり尽くせるかぎり尽くし、しまいには水を頭から被せ追い出したことがある。
あの時、半ベソになりながら帰る女の子の後ろ姿を見ていた楓の目は、まさに悪そのものだった。
後で問いただしても、「お兄ちゃんにちかづくから。」の一点張り。
今まさに目の前の少女は、その時の楓に完全に被って見えた。
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