悪ノ召使

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「ねぇ、リン」 「なぁに?レン」 大きなクローゼットの中。 リンのための大きな衣装箪笥。 そこに僕たちは息をひそめて隠れていた。 (追手が近づいているのに君はなんて甘い声を出すんだろう!) 「服を交換しよう」 「どうして?」 可愛く首を傾げるリン。 リンはこの状況をうまく分かっていないようだ。 今ここに隠れているのだってかくれんぼ程度にしか思っていないだろう。 「イタズラしてやるのさ。みんなを困らせてやろう」 「あら!おもしろそう!」 そう言って無邪気に笑う君。 大丈夫、君は僕が守るから。 「でも、すぐに分かってしまうんじゃない?」 「大丈夫。僕らは双子だよ?きっと誰にも分からないさ」 僕はいつも着ている服をリンに渡した。リンも、豪華なドレスを脱いで僕に渡す。リンのドレスは着るのが少し難しかった。 「まぁ、レン。私にそっくりよ!」 「リンも僕にそっくりだ」 僕は高い位置に結わえていた髪を下ろし、リンは髪を僕と同じ位置に結わえる。 これで偽物の王女と召使いの誕生だ。 「いい?僕がいいっていうまで出てきちゃだめだよ」 「えぇ、わかったわ」
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