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「出てきちゃだめって言ったのに……」
興奮した民衆たちが僕にむかって、いや、この国の王女に向かって罵詈雑言を浴びせるのをボーッと眺めていると、泣きそうに顔を歪めているリンを見つけた。僕の服を着たままだ。
少し汚れている。
それに心なしか痩せたんじゃないだろうか。
こんな時までリンの心配をする自分に苦笑した。
「これより、王女の処刑を行う」
ダメじゃないか。
そんなに顔をぐちゃぐちゃにしちゃ。
可愛い顔が台無しだ。
それに、そんなに泣いていたら君が僕の関係者だとバレてしまうかもしれない。
「合図は教会の鐘の音だ」
教会の鐘の音。
僕たちは教会の鐘の音に祝福されて生まれたのだと、母に聞いた。
「これで仇がとれるな、カイト」
「あぁ……」
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