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赤髪の女剣士が青髪の男にポソリと呟くのを僕は聞き逃さなかった。
あの男は確か海の向こうの王。
あの時殺した緑の娘の…。あの娘の笑顔を思い出す。太陽のように暖かな笑みだった。
そんな彼女に僕は恋をしたのだ。
「レ、ン……!」
小さな声だが、しっかりと聞こえた。
ダメだよ、今は君がレンなんだから。
泣いたらダメだよ。
僕は首を微かに横に振った。
微かな動作だったのにリンには伝わったようで、リンも首を縦にふった。
教会の鐘が鳴った。
断頭台にのせられる。
さあ、最後まで王女を演じきらなくては。
教会の鐘の音は、リンが大好きなおやつの時間。
だから、僕はこの言葉を呟く。
「あら、おやつの時間だわ」
刃は振り降ろされた。
リン、もう泣いてないよね?
僕にはもうみえないから
泣いちゃダメだよ
君は、どこかで笑っていて?
バイバイ、リン
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