1人が本棚に入れています
本棚に追加
──────…
この人間が気になった。
でも少しでも近づけば、また捕らえられるかも知れない。
また、あの人がした様に殴られるかも知れない。
恐い…恐い…
人間の手が、私に近づく。
びくっと顔を伏せると、一瞬人間の手が静止した。
「……大丈夫。恐くない。」
顔をあげると、その人間は手を私の頭に置き、優しく撫でた。
軟らかな笑顔で。
震える、声で。
違った。
違った…。
他の人間とは違った。
あの人とは違った。
こんな私を汚いとも邪魔だとも言わない。
初めての優しさを受けた…。
涙が出そうだった。
何も言えない私を許して下さい。何も返せない私を許して下さい。
私は、あなたに会えただけで幸せです。
この人間の手の温もりに、私は頭を押し付けるようにして心で泣いた。
──────…
.
最初のコメントを投稿しよう!