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ここで私はある作戦を思い付いた。
私はトミーのボストンバッグを机に置いてその中からプリントを取り出した。
2人の方を見るとまだ雑談している。
あぁ、早川くんかっこいい……
心臓が暴れ馬のようにはしゃぎまわる。
しかし、絶対に負けられない戦いがそこにある。
頑張れ、私。
中学のときは学年の男子200人が私を好きになったのよ。
負けるもんか。
私は大きく息を吸い込み、はぁと2人に聞こえないように吐いた後、2人が座る席へ向かった。
2人が話す声が段々近づいてくる。
「好きなサッカー選手?イチロー!」
美華が目を輝かせて言う。
それは野球だろ。
って突っ込んだら負けっていうゲームですか?
私が近づいたのに気付いた2人が同時に私を見た。
「美華、プリント見せて」
そう、思い付いた作戦とはプリントをだしにして美華に話しかけそのまま2人の会話に入るというもの。
宿題も済ませられて一石二鳥。
我ながら完璧ね。
しかし美華の返事は
「ごめん、私も今見せてもらってるとこ」
美華もプリントをだしにしていたとは。
だけどこれは想定の範囲内。
むしろその方が都合がいい。
「じゃあ早川くんそっちじゃない方のプリント見せて」
そう、美華がプリントを終わらせていない。
だったら早川くんしかいない。
これで自然な形で早川くんに話しかけれる。
しかもプリントを返すときに美華を差し置いて2人だけで話してやる。
「いいよ、はい!」
早川くんは白いファイルから課題のプリントを取り出し、にっこり笑って渡してくれた。
かっこいい~。
私も笑顔でお礼を言って自分の席へ戻っていった。
美華はあっけにとられたような顔をしている。
その後しばらくは顔がニヤけるのを必死で抑えていたため顔の筋肉が引きつって痛かった。
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