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「おい、あったぜ」
俺が辞書のケースに入ったままの形で本を机におくと、
吉田は鞄から次から次へと出てくるアニメのキャラクターグッズを物色するのを止め、教室後ろでごちゃごちゃに入れられていた。
教科書類や体操着をもと通りに戻すのに苦戦していた将也も適当にロッカーに詰め込んでこっちにきた。
俺は辞書ケースに入った本のうち1冊を取り出した。
大手書店のブックカバーがしてあり中身は開けてみないとわからないようだ。
「開けるよ、」
俺が表紙をめくるのを2人が緊張した面持ちで見つめる。
俺はゆっくりと表紙を開いた。
本の1ページ目、そこには四角い縁取りの中の上のほうに『女子高生 放課後秘密の補習』と書かれている。
俺達3人は絶句した。
男だから、いや女でもわかると思うがこのタイトルは確実に官能小説だ。
「あいつ休み時間にエロ小説読んでたのかよ!」
声を張り上げる将也。
無理もない。
あんなガリ勉タイプの人間はてっきりこんなのには興味なくて教科書に出てくる小野妹子なんかがズリネタだと思っていた。
というのがこのクラスの木田に対するイメージだろう、いやそうに違いない。
しかしそれは先入観だったようだ。
まさか学校で読むほどの官能小説ファンだとは……
ケースの中の他の文庫本も全て官能小説で内容はすべて学園もので女がいじめられるみたいなやつばかりだった。
……とそこまで妄想したところで始業のチャイムが鳴り、俺の意識は現実世界に帰ってきた。
さすがに本当に机や鞄を勝手にあさるわけにはいかないだろうが、妄想してるうちに木田が読んでる本に興味が湧いてきた。
聞いてみようかな?
とちらっと後ろの席を見るとそこに木田の姿はなかった。
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