No.1

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  ーチュンチュン   『…ん』   俺は鳥の鳴き声で目が覚めた。 いつもなら、母に起こされても起きない俺が。     『珍しい事もあるんやな。笑』     ーコンコン 夏也の母「夏也、電話やで。」   『え? まだ7時やのに?』     夏也の母「なんか急用らしいで。 美雪(ミユキ)から。」     美雪とは、雪のお母さんの事や。 雪のおばちゃんから? なんでや?   俺は混乱しつつ、受話器を受け取った。     夏也の母「ちゃんと受話器戻しにくるんやでー!」     いつの間にか一階に戻った母が叫んだ。 相変わらずでかい声や。   そんな事を考えていると、受話器から声が聞こえた。     《…しもし? もしもし?夏也君?》   俺は雪のおばちゃんに繋がっている受話器を耳にあてる。    『あ、おばちゃん? どしたん?』     《あのね、驚かないで聞いてね? 雪が… 雪が昨日、倒れたの。 それから救急車で運ばれて、今病院にいるわ…》     おばちゃんの声は、微かに震えているのが分かった。     『え、昨日あんなに元気やったのに?』     そうや。 雪は昨日、あんなに笑ってたやん。 大丈夫…大丈夫…。 俺は何度も自分に言い聞かせた。     《夜中に急に苦しがってね…。 あの、夏也君。 時間があるときでいいから、また病院にきてくれへん? 雪も、夏也君がいたら安心するやろうし… 詳しい事も、その時直接言うわ。》     『…わかりました。 病院の場所、教えてくれますか?』     俺はいつの間にか敬語になっていた。     《えぇ… ………の………を……って………よ。》     『ありがとうございます。』      《こちらこそごめんね。 じゃあ、また待ってるわね。》     そう言って、おばちゃんは電話を切った。   プープーと、電話の音だけが虚しく響いた。     はっと俺は、自分がぼーっと突っ立っていたことに気付き、急いで用意をはじめた。    
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