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人間になったら何をしよう。
美味しいものをたらふく食べて、いろんな所へ……そうだ、昔先輩猫から聞いた“ゆうえんち”ってやつに行ってみたいな。
それからあのブス女と暴力男のほっぺも叩いてやらないと。
それからそれから――
「あっ、ねこちゃんだ」
僕が夢を膨らませながらフラフラ歩いていると、背後から少女の声がした。どうやらいつも散策するルートと離れてしまったらしい。見慣れない砂利道の先に白い建物が見える。すぐに僕は警戒体勢に入った。
「だいじょーぶだよ。こわがらないでね、いーこいーこ」
年は5才ほどか。2つ結びの少女は唐突にも、僕の頭に触ろうとした。
僕はさらりと避け、手始めに左手の甲をひっかいた。
しかし少女は泣かなかった。泣かないばかりか笑っている。
なんだこいつ。
僕は気味が悪くなって、少女から三歩離れた。だけどもすぐに少女は三歩近づいてくる。
僕が五歩下がれば五歩近づいて、僕が上を見上げると少女も同じように上を見上げた。
「なんかいるの? まだおひるだよ、おほしさまはみえないよ」
なんだか調子が狂う。
今まで出会ってきた子供とどこか違う。風貌は同じなのに、瞳の奥で見つめている世界がまるで違う。
「もうすぐでゆうちゃんね、おくすりのじかんだからいかなくちゃ。ねこさん、ばいばーい」
そう言うと少女は奥にある白い建物に入っていった。
まるで風のような少女だ。
掴めない、何かが違う。
今までいろんな涙を見てきたけれど、あの子の目は違う。
あれはきっとそう
涙が枯れきった目だ。
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