一章

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『孫――』 『今日も引っ掛かったな。』 雑鬼たちは、今日も昌浩を潰す。 「もっくん、またしても逃げたな~~」 「許せ、昌浩。俺は自分が可愛い。」 今、雑鬼たちに潰されているのは、当代一と呼ばれる安倍晴明の末の孫であり、後継者とも言われる昌浩である。 そして、もっくんと呼ばれるのは、白い体躯に首周りを、まるで勾玉の首飾りのような形の突起が一巡していて、 目は丸く、透き通った夕焼けの色。 『まだまだだな、』 『あぁ、しっかりしてくれよなぁ。』 『『『晴明の孫』』』 そこだけは、大合唱である。 「孫言うな――!」 夜の都に、昌浩の怒声が響き渡る。 やれやれと、もっくんは肩をすくめ、言った。 「おい、お前たち、何か用があってここまできたんじゃないのか?」
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