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卒業式が始まった。
今頃、太陽くんのお葬式が行われているはずだ。
クラスの何人か、太陽くんと特別親しい友達は、卒業式を欠席して、お葬式へ行っているようだ。
わたしは、卒業式に出席していた。
太陽くんのお葬式に行く権利が、わたしにはないような気がしていたし、太陽くんを見るのが怖かった。
「卒業証書授与」
担任の先生が、名前を呼んでいく。
昨日の予行練習は中止になったけれど、
皆、失敗することなく、決められたとおりに、卒業証書を受け取っている。
「東太陽」
太陽くんの名前が、呼ばれる。
『はい』
太陽くんの声が、聞こえたような気がして、
わたしは耳を澄ませた。
聞こえるはずないのに、
どうしても期待してしまう。
その後、間が開いて、次の人の名前が呼ばれた。
太陽くんの代わりに、壇上に登っていく。
そして、卒業式が終わる。
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