251人が本棚に入れています
本棚に追加
文房具店。
ノートの安売りセールが始まっている。
10冊で198円とう、破格の値段だった。
わたしは、それを迷わず手にとって、
籠に入れた。
後は、ペンと消しゴム。
ペンと消しゴムはそれほど安くはなってなかったけれど、自分のお気に入りの文房具メーカーを選んだ。
赤ペンと青ペンが切れていたので、
ノック式にしようか、キャップ式にしようか、と
迷った程度で済んだ。
結局ノック式にした。
籠を持って、レジへ向かう。
レジには人がいっぱい並んでいて、
自分の番がまわって来るまで、かなりの時間を
要した。
文房具店の人も大変だな。
そんなことを考えながら、じっと待っていると、
自分の番が来て、籠をレジの上へ置く。
―え?
レジに籠を置いた刹那、わたしは、目を疑った。
レジの向こう側に、太陽くんとそっくりな人が、
いた。
―太陽君!?
わたしは、目を擦った。
まさかっ、見間違いよ。
もう一度目を開けると、彼はそこにいない。
疲れてるんだわ、わたし。
「482円になります」
店の人の声で、我に返る。
サイフを用意していなかったわたしは、
バックから、カバンを取り出して、
レジに表示された値段を眺めた。
482円。
500円玉1枚と、1円玉2枚出した。
「20円のおつりになります」
わたしは、商品を手にとって、
レジから抜ける。
―太陽くん…
もう、いない人の名前を心の中で呼び続ける。
わたしの心の中には、今でもあなたがいます。
最初のコメントを投稿しよう!