同じ顔、同じ声

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文房具店。 ノートの安売りセールが始まっている。 10冊で198円とう、破格の値段だった。 わたしは、それを迷わず手にとって、 籠に入れた。 後は、ペンと消しゴム。 ペンと消しゴムはそれほど安くはなってなかったけれど、自分のお気に入りの文房具メーカーを選んだ。 赤ペンと青ペンが切れていたので、 ノック式にしようか、キャップ式にしようか、と 迷った程度で済んだ。 結局ノック式にした。 籠を持って、レジへ向かう。 レジには人がいっぱい並んでいて、 自分の番がまわって来るまで、かなりの時間を 要した。 文房具店の人も大変だな。 そんなことを考えながら、じっと待っていると、 自分の番が来て、籠をレジの上へ置く。 ―え? レジに籠を置いた刹那、わたしは、目を疑った。 レジの向こう側に、太陽くんとそっくりな人が、 いた。 ―太陽君!? わたしは、目を擦った。 まさかっ、見間違いよ。 もう一度目を開けると、彼はそこにいない。 疲れてるんだわ、わたし。 「482円になります」 店の人の声で、我に返る。 サイフを用意していなかったわたしは、 バックから、カバンを取り出して、 レジに表示された値段を眺めた。 482円。 500円玉1枚と、1円玉2枚出した。 「20円のおつりになります」 わたしは、商品を手にとって、 レジから抜ける。 ―太陽くん… もう、いない人の名前を心の中で呼び続ける。 わたしの心の中には、今でもあなたがいます。
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