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―重たい。
両手で持っても、この重さ。
廊下の途中で、おかずの入ったバケツを、地面に置いた。
手が真っ赤。大丈夫かな、わたし。
もう一度、バケツを持ち上げて、のろのろと歩き出した。
すれ違う人たちを見て、誰か手伝ってくれないかな、って思っている自分がいる。人を頼りにしたくなるのが、わたしの悪い癖。人とかかわるのが苦手なのにね。ホント矛盾してる。
「檜山、手伝おうか?」
気付くと、太陽くんがわたしと向かい合っていた。
東太陽くん、彼とあまり話したことがない。でも、いつも話の中心にいて、みんなの人気者な存在だっていうことは知っていた。
「え、いいよ」
手伝ってほしいと思っていた心を読まれたのだろうかと恥ずかしくなって、首を横に振った。
「いいから、貸して」
そう言って、太陽くんがわたしの右手に触れた。ドキっとした。わたしの体中の血が、活発に動いている、そんな感じがした。
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