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凍えながら、
やっとの思いで家に帰ってきた少女を、
家の住人たちは厳しい態度で迎えた。
少女「…っ。」
少年たちの母親は、
少女を突き飛ばした。
母親「お前、私の大切な子供に何をしたの!しかもその着物は何さ!一体誰の着物を盗んで来たんだい、この泥棒が!」
少女「これは…借り物で…」
母親「嘘だね!全く、恥ずかしい!拾われの分際で泥棒で、嘘付きで!本当にどうしようもない奴だねお前は!衣食住を提供してやっているっていうのに、恩を仇で返して…私の可愛い子供を殺そうとした!!」
少女「…殺す…?」
母親「そうじゃないか!ねぇお前達?」
少年1「そうだそうだ!」
少女「…違う…」
(もしかしたら、殺されてたのは私の方…)
母親「何が違うんだい!お前を拾ってやったのに恩の一つも返しやしないで!!それどころか疫病神だよお前は!」
少女の言い分は、何も聞き入れてはもらえない。
父親「ただいまー。」
ちょうどその時、この家の主が帰ってきた。
母親「父ちゃん!聞いてくださいよ!」
母親はすぐさま父親に駆け寄って、
子供達も、少女のした事を父親に話し出す。
少女「……。」
(ああ…私、生きたいんだ。こんな扱い受けても、生きたいんだ…。だからきっと…あの時だって、抵抗したんだ…。私…生きたい…自分の事、外の事、もっと知りたい……。)
父親「何!?お前…養われている身のくせに…これ以上何の不満があるんだ?言ってみろ!」
父親は、少女の首元を掴んで無理矢理立たせた。
少女「…なら捨てればいいんですよ。元々ご近所様からの評判を良くする為に拾ったんでしょう?だったら…」
言った本人ですら驚く程、
すらすらとそんな言葉を口にした。
少女は恐らく、この時初めて、
ここまで反抗的な目をした。
父親「そこまで言うか…拾われの分際で…!!」
少女の態度が怒りに触れた父親は、
部屋の奥に飾ってあった刀を掴むと、
スラリと抜いて、
少女に向かって振り上げた。
少女「……!」
――ああ、そうか…
私は生きたいんだ…
それでも、生きたいんだ…
生きて…あの人に、羽織を返したい…
今はただ、それだけでも――
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