第1章 第1話

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振り下ろされる前に、 少女は父親の刀を持った手首を掴んだ。 少女「…」 父親「…ぐ、ぐぁぁぁ!」 骨が軋んだ。 父親は悲鳴をあげ、 必死に抵抗した。 大の大人の力を持ってしても、 少女のそのか細い腕を払いのけることができない。 少年3「父ちゃん!」 少女はそのまま父親を突き飛ばす。 反動で、少女はその場に倒れた。 大きな音を立てて、家の壁には穴が開き、 父親はその穴の中で意識を失っていた。 母親「きゃああぁ!!」 あまりの出来事に、母親はガタガタと震え、 その場から動けなくなってしまった。 少年3「父ちゃん!!」 子供達もあまりの恐怖に泣き喚く。 少年2「お前…よくも父ちゃんを…!」 そんな中、少年の一人が、 父親の刀を拾い上げると、 少女に突進していった。 少年2「捨て子のくせに!お前なんか死んだって誰も悲しまないんだ!要らない奴なんだぁ!!」 少女「っ…!」 寒さで体が動かない。避けきれない。 キィン! 少女「…!?」 反射的に目を閉じた少女の前に、 大きな影があった。 ?「家族喧嘩にしちゃ随分派手にやらかしてるじゃねェか。」 少年2「な…なんだお前!」 少女「…あなたは…」 霧生「…よォ。また会ったな。」 目の前には、あの時羽織を貸してくれた男、 霧生が立っていて、 霧生の刀が、少年の刀を受け止めていた。 少女「……。」 (助け…られた…?) 母親「だ、誰よあなた…。まさか泥棒!?」 母親は恐怖に震えていた。 霧生「そんな大層なモンじゃねェよ。」 少女「…どうして、ここに…?」 霧生は軽く少女の方へ振り返ると、 少しだけ笑ったが、 すぐに母親の方へ向き直った。 霧生「…ちょっとこいつ借りるぜ。」 そう言うと、 少女に外へ出るよう促した。 家の外へと出ると。 霧生「…これからどうする?」 少女の方へ振り返りながら、霧生が言った。 少女「え?」 霧生「あんな事があったんだ、もう一緒には暮らせまい。それとも、奴らとまだ一緒にいたいか?」 少女「…今までだって、一緒に暮らしてたという感覚は…無いです。私が、あの人達の邪魔を…していたんです…。」 少女は、ボロボロの服の裾を、 ぎゅっと握った。 霧生「……。」 少女「……。」 霧生「行く所なんか無いんだろう。なら、俺と来るか?」 少女「…!」 少女は驚いて霧生を見上げた。
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