222人が本棚に入れています
本棚に追加
霧生「ただし…来るなら覚悟を決めて来なけりゃ死ぬぜ。中途半端な仲良しごっこの気分で生きていける所じゃない…。」
思わぬ言葉に、少女は目を大きく見開いた。
死ぬかもしれないという事に対してではない。
霧生が自分を連れて行ってやると提案してくれた事に対してだった。
少女「……。」
霧生「強制はしない。少し考えろ。」
少女「…考えなくても…私の気持ちは…決まっています。」
霧生「……。」
少女「行かせてください。」
少女は、じっと霧生の目を見返した。
外の世界の事も、自分の事すらもまだ何も知らない、
澄んだ真っ黒の瞳。
霧生「…恐らく、お前が思っている以上に大変な所だぜ?しかも、見ず知らずの人間について行くってのか?」
少女「もう、見ず知らずじゃないです。あなたは、私に話しかけてくれました…。私を…二度も助けてくれました…。それに…信じてもいいと、思えるんです。」
霧生「…やっぱり、変な奴だな、お前は。」
霧生は、鼻でふんと笑った。
二人は家の中へ戻った。
霧生「話がついた。こいつは俺が貰っていく。」
母親「な、何言ってるの!そいつはうちのだ!」
霧生「今まで好き勝手しておいて、要らないと言ったり殺そうとしておきながら?」
母親「こ、殺そうとしたのは父ちゃんやあの子が勝手に…!」
少年2「母ちゃん!」
母親「それに、今まで私達がそいつを生かしてきたんだよ!どうしようと私達の勝手じゃないか!!」
霧生「…何に執着しているのか知らねェが、今まで散々蔑ろにしてきておいて、こいつがまだついて来ると思ってるのか?…準備が出来ているのなら行くぞ。」
そう言うと、
霧生は先に歩き始めた。
持っていく物など何も無い。
すぐに少女もその後を追う。
母親「お待ち!」
少女「……。」
少女は立ち止まった。
母親「そんな得体の知れない奴について行った所で、どこかへ売り飛ばされるに決まってる!それに、そいつについて行って、二度と帰って来れると思うんじゃないよ!!」
少女「…私はここに居ても居なくても…同じ。自分でも、私は何なのか分からなくて…こんな私でも…声をかけてくれる人がいて…。だから私は……」
背を向けたまま独り言のように、
少女は呟いた。
そして、霧生の後を追いかけた。
雪は、更に激しく、
しかし静かに降っていた。
二人は、ただ無言で雪の中を歩いて行く。
少女「……。」
霧生「……。」
最初のコメントを投稿しよう!