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それから先に口を開いたのは、
霧生の方だった。
霧生「…泣いてるのか?」
少女「……いえ。」
霧生「ガキが無理する必要は無いんじゃねェか?」
少女「…分からないんです。」
霧生「何が?」
少女「今、自分が…何を思っているのかさえ…分からないんです。」
霧生「…色々あったからな。そのうち気持ちの整理もつくだろう。」
少女「…うまく、言えないんですけど…。」
霧生「言ってみろ。」
少女「これから先も、ずっとあの家で一人なのかなって…このまま死んでいくのかなって…思ってたんです。でも…どんな理由でも、拾われたのは…事実で、こんな事を言えるような人間じゃ…ないんです。私…感謝しないと、いけないんですよね。あの人達に…なのに私は…。だけど、やっと…自分っていうものの意味が見つかりそうで…あの…えっと……」
霧生「…はぁ。」
霧生は大きな溜め息をついた。
少女「?」
霧生「…ガキがぐだぐだくだらない事考えるな。ガキはガキらしく生きていればいいんだ。」
少女「……。」
霧生「だいたいお前…本当に喋るの下手くそだな。」
少女「ごっ…ごめんなさい…。」
霧生「言いたい事はなんとなく分かるがな。しかしまァ、ガキのくせに今までよく耐えたもんだ…。」
霧生が少女の頭に手を伸ばすと、
少女がビクリと怯えたので、
霧生は手を引っ込めた。
少女「…あ…」
霧生「……。」
少女「……ごめんなさい。」
霧生「いや。」
少女「あの…えっと、ありがとうございます。」
霧生「?」
少女「私を…三度も助けてくれて…。」
霧生「三度?」
少女「羽織を貸してくれましたし…斬られそうになった時も…それに…こうやって、連れて行ってくれるって…。」
霧生「礼を言われるような事じゃねェよ…これから返してくれれば、それでいい。」
少女「はい。私、絶対に…あなたのお役に立ちます!きっと…。」
霧生「きっとと絶対じゃ、全然違うんじゃ?」
少女「あっ…えっと、あのっ…すみません!そういうつもりじゃ…あっ、そうだ、あの、この羽織返さないと…!」
霧生「出発したらいい服を買ってやるから、それまで着ていろ。だいたいそれが無いとお前動けないだろ。」
少女「あ…そうですね…でもあの…寒そうですし…。」
霧生「俺が?人の事より自分を心配をしたらどうなんだ?」
少女「あ…そうですよね…。」
霧生「……。」
(変な奴。)
二人は雪の中、
暗闇の奥へと消えていった。
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