第1章 第2話

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初めて貰った名前。 勿論、『以前』にも 名前はあったのかもしれない。 けれど、そんな事は関係無い。 『今』の自分にとっては とても嬉しい事なのだ。 名前もなく、自分については何も知らず、 そんな自分が、 誰かの役に立てるようになるかもしれないだなんて、 思いもしなかった。 れん「……。」 (この名前は、大切にします…。そしてきっと、あなたのお役に立ちます。何ができるか分からないけど…。私を連れ出してくれて、名前もくれたこの恩は…絶対に…忘れない…。) 霧生「さて、行くとするか。」 れん「…どこへ、ですか?」 霧生「その薄い服で、ずっと俺の羽織りを羽織っとくわけにはいくまい。お前の服を買いに行くんだよ。」 れん「…けど、あの…お金は…」 霧生「ガキが金の心配してんじゃねェよ。」 霧生が微かに笑ったような気がした。 下の階に下りると、女将が声をかけてきた。 女将「…お出かけですか?」 霧生「…あぁ。」 女将「お気をつけて。」 霧生「……。」 外へ出ると、 急に寒さに襲われた。 れん「…っ」 霧生「…本当に寒がりだなお前…大丈夫か?」 霧生の方は、旅館から別の羽織を借りていた。 れん「…寒くないんですか?」 霧生「寒い。」 れん「全然そんな風に見えないです…。」 霧生「あ?」 れん「…何でもないです。」 二人はてくてくと町を歩いていく。 れんは、自分の名前の由来や、 何故外へ出る時に笠を被るのかとか、 その目はどうしたのかとか、 霧生の下の名前は何なのかとか、 色々と話しかけたかった。 何より、霧生の事をもっと知りたかった。 だが、何から話していいのか、 聞いてもいいのかどうかも分からなかった。 れん「……。」 霧生「何を考えている?」 れん「いえ、何も…。」 霧生「…そうか。」 れん「……。」
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