第1章 第2話

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そうこうしているうちに、 目的の服屋に到着した。 霧生の後について、れんも中へ入る。 店員「いらっしゃいませ~」 店内には沢山の着物が並んでいた。 れん「……。」 (うわぁ…こういうとこ、初めて…。) れんは目をまんまるにしている。 霧生「気に入ったのあったら何でも言えよ。」 そう言われて、店内を見て回るが、 どれがいいかなんてさっぱり分からない。 店員「お気に召したものはございますか?」 れん「えっ、と…」 れんは基本的に人見知りするようだった。 それに、つい最近まで、 あの家の人間以外と話した事も無かったのだ。 店員と何を話せばいいのか分からず、 すっかり困ってしまった。 霧生「……。」 店内の壁にもたれかかっていた霧生は呆れたように、 一枚の着物を掴んでれんに渡し、 試着するように促した。 店員はれんを連れて店の奥へと消えていった。 少しして店の奥から出てきたれんは、 黒い蝶の柄の真っ白な着物を着ていた。 れん「…変じゃないですか?」 霧生「…別に。」 霧生はそっぽを向いた。 店員「よくお似合いですよぉ!最近若い方に流行りの短めの丈ですし!これにいたしますか?」 れん「えっと……はい。」 霧生「…それと、それに合う羽織りと履き物も揃えてくれ。」 店員「かしこまりましたぁ。さ、こちらへどうぞ!」 れんは店員に連れられ、 色々と試着していく。 途中、ちらりと霧生を見ると、 そっぽを向いたまま、やはり壁にもたれていた。 店員「ありがとうございましたぁ!またお越しください!」 羽織りと履き物も無事購入し、 二人は店を出た。 れん「あの…ありがとうございます。」 霧生「ついでに笠も買って行くか。雪除けにもなる。」 そう言うと霧生は近くの笠屋に入った。 れんも続いて中に入る。 霧生は年老いた店員と二、三言葉を交わし、 すぐにれんに合った笠を買い、外に出た。 霧生「さて、次は書物館へ行くぜ。」 れん「…書物館?」 霧生「知らないのか?色んな書物が読める所だ。」 れん「調べ事、ですか?」 霧生「…まぁそんなとこだ。」 二人は書物館へと歩いて行く。
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