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「頭は大丈夫だ。君の方が重症だろう」
「……は?」
なにを失礼な、口を曲げる。
「頭に巻いたそれは、見慣れないが包帯だろう? 頭とは災難だったな」
ペロリとメロンパンを平らげた王子は、次は何を食べようかと物色を始めた。
「こ、これはバンダナだっ! 髪の毛が落ちないようにしてるだけだっ」
やっと王子の言いたいことを理解した娘はカッカッする。そして王子の肩を引きこちらを向かせる。
「ふざけているのか?」
言葉遣いの汚い娘だ。自分より数センチは高い娘を見上げる。
「それに、見たところ幼い。親御さんはどうした。成人前の夜の一人歩きは禁じられているぞ」
地雷を踏んだ。王子は肩の手を払いのける。童顔で背もそう高くない王子は、実年齢より3歳は若く見られた。
「僕は成人しているっ」
ぷんっと頬をふくらませる。その反応も若く見られる一因なのだが王子は気づいていない。
「そんな風には」
「見えないか! 失礼な娘だ。僕は今日、みんなに祝われて成人したと言うのに」
王子とは案外、顔が知られていないのか? 僕の誕生日を今も祝っている人もいるというのに。
王子は途端に押し黙った。
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