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王子はそれからも、よく気が向いたのか、街に出ることが多かった。よく出るものだから、王様は恋人ができたかと笑ったものだった。
「恋人とか結婚とか、父の頭の中はそういうものでいっぱいか?」
あれやこれやと聞かれた王子は不機嫌に、従者に愚痴る。
「一人息子ですから、気になって仕方ないのですよ」
従者の言葉に、それはどうかな、と腕を組む。
「父は僕に何かを期待している。早く変身しろ、と言われた」
どういう意味だ?
「大人としての自覚を持て、という意味では?」
「自覚は持っている。失礼だな」
王子はぷくっと頬をふくらませた。
「失礼しました」
柔らかい笑みで、従者は頭を下げる。全く、王子は息を吐き、ドスンと座り直した。
「父の言葉なんて、気にしても仕方ないか」
いつも信頼のないことしか言わないし。王子は目を閉じ、街に着くまで寝ることにした。
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