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「ようやく変身したか!」
沈痛な雰囲気の流れるこの場にはそぐわない王の笑い声。
「あなたの仕業ですかっ」
黒猫を抱いた従者が、泣きはらした目で王を見上げる。
「仕業とは失敬! 愛情だ愛情表現だ!」
「偏りすぎです!」
黒猫は面倒くさそうにあくびをした。
「王子を元の姿に戻してくださいっ」
ずいっと眠そうな黒猫を王に近づける。
「おやー可愛いねえ」
近づけられた猫を見て、王は眉尻を下げた。手を伸ばし頭を撫でると、ガリっと引っかかれる。
「たまらんなっ」
猫好きの王は、ふやけた顔で笑う。
「可愛いのは知ってます!」
従者は自分の胸に黒猫を抱きしめる。
「にゃぁ」
離せ、とばかりに黒猫は身をよじるが、脱出できない。
「早くっ」
従者の言葉に、王はやっと答えた。
「わしには無理だっ」
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