王様のたくらみ

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「チュウ?」  王子と従者は共に首を傾げる。 「つまりはキスだっ」  腰に手を当て、ズバリ言い放つ。 「王様っ」  従者の叫びが広く静かな部屋に響く。他の従者たちは寝ているのか、大きな声に驚いて三人がいる応接間に集まることはない。 ――頭大丈夫か、このおっさん  ぼうっと思いながら、王子はなんだかどうでもよくなってきた。口から出る言葉は「にゃあ」だが、まだ自分の姿を確認していなかったので夢のような心地でいたらしい。軽やかにするりと従者の腕を抜けると、 「にゃあ」  部屋に戻った。 「王子」  まだ言い足りないらしい顔で従者が後を追いかけてくる。  そして、部屋のドアを開けてもらい鏡を見た。 「にゃあーーっ!」 ――なんじゃこりゃっ!  鏡の前には、目のくりっとした黒猫がムンクの叫びのような姿で座っていた。
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