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「あの人はいつになったら落ち着くんだ」
誕生祭を終えた王子は、従者に愚痴をこぼす。きゅうくつなのか、正装である黒いジャケットのボタンを外した。
「まあまあ。王様のおかげで、楽しい誕生祭だったじゃないですか」
黒いタキシードをピチッと着こなしながら、従者は笑う。
「ああ、胃が痛い」
従者の言葉に王子は苦笑い。楽天家の王様に似たようなところはあるものの、まだちゃんとしている王子は胃の辺りを撫でる。
「もっと肩の力を抜いても大丈夫ですよ」
「僕が肩の力を抜いたら、均衡を保てないだろう」
「均衡、ですか?」
「ふわふわ浮いてるものは、重石がないと飛んでいってしまうからな」
独自の論理で納得したように頷く王子。意味がわからない従者は首をかしげ、口にできない言葉を思う。
――そういうところ、王様とそっくりですよ。
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