始まりは誕生祭

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「これから街に出る」  王子は興奮を隠すように腕を伸ばす。成人になると、城から出られる。その日がやっときたのだ。 「いまから、ですか?」  誕生祭でくたびれたのか、従者が驚く。 「今日という日はもう二度とないからな」  全く答えになっていない言葉に、楽しみで仕方ないことがうかがわれた。仕方ない。従者は王子の部屋のドアを開ける。 「では質素な格好にお着替えください」 「わかってる」  王子はそそくさと部屋に入る。背後でドアの閉まる音がした。 「要は人ごみに紛れるような格好ならいいわけだ」  王子は見たことのある町人の姿を思い浮かべる。 「これ、か?」  鏡を見ながら首を傾げる。黒髪が鼻にかかった。
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