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少し歩きます、そう言った従者の後をキョロキョロと落ち着かない様子で歩く。王子にとっては町外れの整備されていない道も興味深いものだった。
「ここが街か」
「正確には少し違います。街はあれです」
オレンジ色の光を指差す。
「……ほう」
王子は誕生祭のときに見せた表情になる。
「楽しそうだな」
近づくと、ガヤガヤ、アップテンポの曲音楽が聞こえる。楽隊が来ているのだろうか。それにしてはどことなく下品な音だ。
完全にオレンジ色の光に交わると、王子は耳をふさぎたくなった。食器を叩く音に怒号、歓声。相容れぬ音の応酬は耐え難い。
「街とはこんなに騒がしいものなのか」
声を張り上げ、ケロッとした顔をしている従者に問う。
「今日は特別です」
「特別?」
「王子の誕生日、公に騒げる数少ない日ですから」
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