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｢なんか言われた？｣｢辛いことあった？｣
まだ付き合いたての頃､今みたいに泣いていたかずに
無理矢理こちらを向かせて赤い目を見つめて言ったことがある。
かずは一瞬何か言いたそうな表情をしたが
すぐに顔を俯かせて
｢…ごめん｣
と一言苦しそうにもらした。
ああ､オレがかずを更に追い込んでしまったんだと悟った。
こんな日のかずは､割れ物注意と書かれたシールが貼ってあるかのように
はかなくて､危うい。
強くおもいっきり抱きしめたら
きっとすぐに音をたてて割れてしまう。
オレはそれがこわくて
どうしようもなく不安で
震える手をゆっくりと動かして
そっと目の前の小さな背中を抱きしめた。
一瞬びくっと固まったが､抵抗されることはなかった。
ほっと息をついて､静かに目を閉じて､かずの頭を撫でる。
まだ､泣きやむ気配はない。
本当は何があったとかそんなに無理すんなとかオレをもっと頼っていいんだよとか…
言いたいことは山ほどある。
でも､かずにもきっとプライドがあるんだよな。
オレはマイペースだから仕事でこうなることはないけれど
何か辛いことがあったとき､
絶対泣き顔は誰にも見られたくない。
意地っ張りって言われるかもしれないけど
男って多分そうゆうものなんだ。
だから､かずの気持ちはよく分かる。
オレに出来ることは､ただかずの苦しみがなくなるように祈りながら
抱きしめること…
→つづく
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