序章

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俺は園堂四季。魔法使いである父の影響を受け、父と同じ冬夜魔法学校に入学した。 父の時もそうだったように、冬夜魔法学校は完全寮制だ。 その理由は、「生徒間の互いの協力によるさらなる能力の向上と友情の深め合い」だそうだ。 もともと、学校から家がものすごく遠い俺にしてみればどちらでもよかった。 家から通って毎日遅刻はごめんだし……。 入学してから知らされたのだが、なんとこの学校、「恋愛とそれらしい言動の禁止」という校則があるらしい。 この規則には驚かされた。どこのどんな学校が恋愛を禁止するだろうか。年頃の生徒の集まりのような学校で、そんなことをしてもいいのか。 さらに、違反者には何かしらの罰則があり、その中には聞いたこともないようなものもあるらしい。 実はこの冬夜魔法学校、元々は男子生徒が9割以上を占める学校だったのだが、数少ない女子生徒を巡り男子生徒が、後に「第一次校内戦争」と呼ばれる大騒動を起こした過去がある。 以来現在の校則が取り入れられたが、学校の授業方針が大幅に変わり、後十数年で男子生徒の数が減少、代わりに女子生徒の割合が増え、男女の比率が五対五にまでになり、一時は「恋愛禁止」の校則が解消されたらしい。しかし、その後女子生徒の数が増え続け、今では昔とまるっきり逆で今度は数少ない男子生徒をめぐって女子生徒たちが争うようになっている。そんな状況では、もちろん例の校則は復活することとなった。 父は「恋愛禁止」の校則がない時代に在学し、母と知り合い結婚したそうだ。 その頃は男女の比率的に丁度よかったかもしれないが、現在の状況では俺は肩身の狭い思いをするのではないかと心配していた。 周りが女子だらけの入学式の時、俺がどんな気持ちだったか父には解らないだろうな。 あの父のことだからきっと、女の子に囲まれて幸せじゃないか、と皮肉を言うだろう。 そんな入学式からもう二ヶ月以上が経とうとしている。 寮での生活スタイルにも慣れてきたし、当初心配の種だった肩身の狭い思いも一度たりともしていない。 ただ、肩身の狭い思いをせずに済んだ理由と共に、昔の心配だったことのそれとは違った、予想もしなかった新しい問題が浮上した。 それは一体何か。 それは俺の日常であり、俺を色々と悩ます一部の人間の言動そのものであった。
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