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四角い窓から朝焼けの空が見える。
徐々に高度を高めてきた太陽の光が、静かな世界にゆっくりと射し込む。
また一日の始まりがやって来た。
俺は白いワイシャツに黒のスラックス姿でベッドに横たわりながら、その光景をのんびり眺めていた。
こぢんまりとした簡素な空間。ここは冬夜魔法学校の学生寮の一室。そして、この空間は俺の部屋でもある。
部屋には生活に必要最低限の家具が置かれていて、いずれも飾り気のない質素な造り。
それ以外はまっさらな、まさに何もない部屋だ。ここへきて二ヶ月経つというのに、いまだに引っ越し後の新居みたいに整然としている。
けれど、家具の配置が自宅の自分の部屋と似ていて、朝起きたときに寝ぼけて思わず、何故自分の部屋に戻ってきてしまったんだと錯覚してしまうときがある。
そんなときはこうして窓の外の、自分の部屋からの眺めとは全く違う景色を眺めながら記憶を復元していく。
突然、コンコンとドアをノックする音がした。
たまに、いや、最近は毎日か、俺が起きるか起きないかの朝方にこうしてアイツがやって来る。
返事があろうがあるまいがお構いなしに入ってくるアイツは、俺がまだ寝ているときでさえ気にもとめずに上がりこみ、おまけにベッドにまで潜り込んでくる始末。
俺は何度そうして度肝を抜かされたことか。
一人用のベッドで寝ている俺の隣に、
「おっはよー四季! お、今日はもう起きてるね。寝ていたら襲っちゃおうかと思ったのにな~」
左胸の位置に校章の刺繍がある赤いブレザーと黒いスカートという冬夜魔法学校の女子生徒の制服を着た、こんな発言を平然と言ってのけるこの女が、体を寄せながら寝ているのだから。
この女子生徒、名前を羽鳥美雪といい、俺は普段は美雪と下の名前で呼んでいる。
「なぁ、美雪。なんか段々来る時間が早くなってきてないか? 今日は昨日より十五分も早いぞ。いくらなんでも、もう少し遅く来てもいいんじゃないか」
俺がそう言うと、美雪は部屋に上がりこみ、こっちに歩いてくる。
肩にかかるくらいの狐色の髪に、その髪と同じ色の瞳を持ち、悪戯っぽく笑みを浮かべながら、美雪はベッドの脇までやって来ると、顔がくっつきそうになるくらい近づいた。
俺は思わず背後の壁まで後ずさり、壁に背中がぶつかった。
これ以上はさがれない。
しかし、美雪は気にせずさらに顔を近づけるとこう言った。
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