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彼が止まった足を動かすとその足を追って猫が着いていく。
しかし彼は気づかない。10分程歩き、家のドアを開けようとしてようやく気付く。
「お前。着いて来てたのか?」
猫に聞いても答えない。ミャァと一鳴きするだけである。だがその様子がまるで返事しているように見えて愛らしい。
「……上がってくか?」
玄関に座り猫を撫でながら話しかける。
彼は一人暮らしである。彼が小学三年生の時、両親は車で移動中テロに巻き込まれて死んでしまっていた。彼に残ったのは医者だった両親の莫大な遺産と幼い彼一人には大きすぎる家だけであった。
彼もまだ高校生。一人では寂しいのだろう。
猫は黙って上がるとリビングに入りソファの上で丸くなった。
潤は冷蔵庫から牛乳を底の浅い皿に入れると猫の側に置き、自身は料理を作り始めた。
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