その乙女、懊悩

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  「……心中、お察し致します」  どう声をかけて良いものかも解らず、無難な言葉と共にリカルドが顔を歪めると、アイリスは力無く微笑んだ。 「だからね、私は寂しくはない。最初から……ずっと昔から、全てを諦めていたから、それが唯一の救い」 「旦那様も、お寂しい方でございます。孤独であったのは奥様お一人ではない事、どうかお忘れになられませぬよう」 「……そうね。数時間前までは、私もそうだと思っていた。  でも、彼に言われたの。  自分は皇女殿下の騎士で、常に彼女を一番に考えなければならない。  だから君を愛せないし、愛する気も無い……と」  アイリスが一言一句違わず再現すると、リカルドは呆れたように小さく息を吐く。  確かにそんな言い方をされてしまえば、若い彼女が落ち込むのは解る。  だが恐らくそれを口にした張本人は、その言葉が新妻の心をどれ程に抉るかなど、半分も理解していなかったのではなかろうか。 「だったら、結婚なんてしなければ良かったのに――なんて、考えてしまうの」 「奥様……。奥様が、旦那様のお心を開いて下さる事を、私めは祈っております」 「……ありがとう」  アイリスは、退室するリカルドの背中に小さく笑う。  リカルドは朝の自身の発言にも責任を感じているのだろう、とアイリスは思った。  シエルの言動に比べれば、アイリスは大して気にしていなかったし、事実なのだと納得している程だったのだから、彼が気に病む事は無いのに――。  アイリスは、カップを口に運びながら苦笑した。 「……美味しい」    
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