その乙女、可憐

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  「クラウド、お仕事は何をしているの?」 「少し前まで学生でしたが、今はお屋敷の雑用を……」  少女は半瞬ほど思案し、彼の瞳を見つめ込む。 「……そう。ではクラウド、私の侍従になる気はある?」 「え……」 「奥様!?」  困惑したような表情で唇を動かすが、青年は言葉を探しあぐねているらしかった。  リカルドなどは驚愕のあまり、開いた口が塞がらない様子である。  アイリスは笑顔で言った。 「大丈夫。貴方には元々、シエルの執事に専念してもらおうと考えていたから」 「ですが、旦那様のお申し付けですし……」 「私が暫くこの屋敷の様子を見た限り、シエルの執事を貴方以上に理解している使用人はいないでしょう。  あの人も、きっと私の考えた事に反対はしないしね」  リカルドも困った顔はしているものの、確かに主人の反応を容易に想像できたのか、それ以上は口をつぐむ。  アイリスは僅かに笑みを深め、再びクラウドに顔を向けた。 「異論はないようで何より。  さて、問題は貴方の意思。クラウド、貴方はどうしたい?」 「……私は──」
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