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「そう? それなら良いけど……」
「大丈夫です」
クラウドが穏やかに笑ってカップを口に運ぶと、幾らかは安堵したのか、アイリスの表情も和らぎ、ゆっくりと話し始める。
「……私の父はね、派手好きで女好きな浪費家で、とても良い父親とは言えなかった。
妻に先立たれて自暴自棄になった事を差し引いて考えても、どうしても父が好きにはなれなくて、良好な親子関係を築けなかった」
相槌を打つべきか悩みながら、クラウドは頷くに止めた。
「まあ、その割には大きな揉め事は起こさなかったから、爵位剥奪なんて事は避けられたのは運が良かったかな……。
でもね、貴方達を見ていて思ったの」
誰の事を指しているのか、クラウドは話の流れから嫌でも理解する。
「貴方の父親は、私の父とは違う。
比べる事も憚(はばか)られるほど立派に尽くしてくれる有能な執事なんだから、もっと誇りを持ったら良いのに……なんて、余計なお世話ね」
そう言って微笑むアイリスに、クラウドは微苦笑を浮かべ、ゆるゆると頭を横に振って見せた。
「私は、父に疎まれていますから……」
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