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ぞわり、と肌が粟立つ。
――幾ら彼女が鋭かろうと、"勘"でそんな事まで解る物だろうか。
「ですが――」
「勘、当たったでしょ?」
まるで親の賛辞を期待する子供のように首を傾け、アイリスはクラウドの言葉を遮る。
そして、こう続けた。
「世界は、理不尽にできている物。
でも、貴方はほんの少しすれ違っただけなんだから、今からでも振り返れば、きっと間に合う」
「貴方は幸運ね。
これからは、幾らでもその機会があるんだから……ね、リカルド?」
アイリスがクラウドの顔から視線をずらし、背後に笑顔を向ける。と、些かわざとらしく咳払いする男性の姿が在った。
「……奥様、私は旦那様がご不在の間は、奥様のお世話を仰せ遣っております」
「解っています。
貴方は私を心配して一時間毎に様子を見に来ると踏んだから、クラウドに執事を任せるの」
不敵な笑みを浮かべるアイリスに、執事親子は苦笑する。
彼女なりの気遣いか、単なる遊興のつもりかは解らない。
しかし、ひび割れた関係を修復するに適当な距離感を作ってくれた彼女に、感謝すべきである事は明白なのだから。
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