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「こんなに早く見つかるなんて、つまらない。
しかも私に躓いて転ぶなんて、注意が足りないわよ」
だが、押し倒された格好のイリスは、何故か満足気な笑みさえ浮かべている。
「申し訳……ございません……」
寧ろ彼女に覆い被さっているシエルの方が、あまりのショックに硬直しているようで、大きく眼を見開いていた。
「ご無事でしたか……。良かった……」
ケイトとて少なからず動揺しており、思わずその場にへたり込む。が、彼女に対するイリスの反応は冷たいものだった。
「あら、残念だったわね。
シエルともっとお話ししたかったでしょうに」
「滅相もございません。私は――」
弁解しようとしたケイトは、しかしイリスに横目で睨まれ、言葉に詰まる。
同性であるが故に、ケイトも彼女の気持ちを何となく察してしまったのだ。
イリスがシエルに向けている想いの断片を――。
「姫様、悪ふざけも大概になさってください。
少尉は、私に手紙と報告を――」
「手紙? ああ、これの事ね」
立ち上がろうとするシエルの胸元からイリスが便箋を抜き取ると、さすがのシエルも、口調は穏やかではあるが、些(いささ)か口の端が引きつった。
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