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「何をですか?」
「一月前、ダルトシュタイン卿邸でパーティーがあったのだけれど、それは知っているね?」
「ええ」
アイリスはそのパーティーに参加した時の事を思い返し、頷いた。
──あれは一月と少し前。
その夜、特に父親からは何の説明もないまま着飾らされて連れ出されたかと思えば、父は会場に到着するなり、ダルトシュタイン卿の末の妹をダンスに誘い、ホールへ行ってしまった。
──それがダルトシュタイン家当主の将軍就任を祝うパーティーであった事も、仕方なく壁際で一人でレモネードを飲んでいる間に得た情報であった。
「その時、話題になったご令嬢がいてね。
誰も彼女の名前を知らなかったのだけれども、壁の華にしておくのは本当に勿体ない美人だったらしく、一月経った今も、夜会はその話題で持ちきりなんだ」
「はあ……」
──それと自分がどう関係しているのか、まだ判然としないアイリスは首を傾げる。
「……判らないかな?
君の事を言っているのだけれど」
シエルは苦笑してから、きょとんと目を見開くアイリスの手の甲に口づけた。
「長いブロンドの猫っ毛で、雪のように白い肌、琥珀の瞳の『白薔薇の君』。
捜し当てるのに一週間もかかってしまったよ」
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