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屯所には古高の断末魔が響いていた。
あいつを無理矢理抱いたのは宮部鼎蔵。
今回の事件の首謀者と見られる。
そしてその宮部から武器の調達などを任されていたのが、桝屋喜右衛門こと古高俊太郎。
全貌を吐かせようと奴を拷問にかけていたが、一切口を割らない古高に副長が痺れを切らした。
鬼の副長という名の如く、目を覆いたくなるような拷問だと、蔵の中から出て来た隊士がぼやいていた。
俺は蔵の近くでその様子を伺っていた。
するとあいつが門番の島田と言葉を交わしている。
嫌な予感がした。
その予感通り、あいつは蔵に入って行った。
目を覆いたくなるような状況の中、あいつは何をするんだ。
俺も蔵へ急いだ。
中を覗くと、逆さに吊され、五寸釘を足の裏に打ち付け、そこに百目蝋燭を立てられている古高の姿。
それを汗だくで、しかし顔色の変わらずにしている副長の姿があった。
本当の鬼の姿を見た気がする。
そして、あいつは古高に今にも口付けてしまいそうな距離で何かを話していた。
その姿は妖艶で、そして背筋が凍りそうなほど冷たい視線だった。
まるで雪女を見ているような気さえなった。
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