第二十三章 試衛館大学

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政略結婚の準備は着々と進む。 院長の妹とあってその結婚式は盛大だ。 披露宴の参加予定人数は千人。 病院関係者を含め、大学病院関連、業者関連。 お色直しは洋装3着に和装2着。 衣装選びのために式場を訪れた仮面夫婦は会話をすることなく、衣装担当者の話を聞く。 「結婚式という人生の華やかな舞台に立つ二人のお手伝いを出来るのが私の幸せなんです。」 衣装担当者はニコやかに二人を見つめる。 土方は冷めた目でその担当者を横目でチラリと見た。 (口先ばかり…) そう言いながら、与えられた衣装を着る。 真っ白のタキシード。 まるで着せ替え人形かのように、どこに違いがあるか分からないようなものを何着も着せられた。 花嫁は自分のウェディングドレス姿を鏡で見て、微笑んだ。 女の憧れであるウェディングドレスを着られる。 その相手が一番好きな人でなくても。 彼女は自分の夫となる土方の方へ振り向く。 「どれが良いと思いますか?」 彼女は土方の言葉を待つ。 「どれでも良い。君の好きなものにしなさい。」 土方は彼女の方を一度も見ることはなく、経済誌に目を向けていた。  
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