第二十三章 試衛館大学

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たとえ政略結婚とはいえ、事実上夫婦になるのだ。 今はお互いに気持ちが無くても、共に生活していくうちに家族としての愛情が芽生えるはずだ。 そう思っていたのは、"妻"だけだった。 "夫"は結婚式当日も、全てにおいてスマートにこなした。 大勢の来賓がいる中、新郎として、外科部長として、淡々と出来るのは"妻"への愛がないからなのか。 全ては創られたもの。 感情は入らない。 与えられた任務を果たすだけ。 結婚式当日、新婚初夜となるその日に、"夫"は"妻"の元へは帰らなかった。 「最低な男ね。」 土方の左胸に頭を置きながらつぐみは呟く。 「その最低な男に抱かれてるのはどこのどいつだ?美人歯科医で評判の立本先生?」 「来ないでって言っても来るのは誰よ。」 「嫌なら入れなきゃ良いじゃねぇか。」 拒めるはずがない。 何度も自分に言い聞かせた。 土方とこの関係を続ければただの愛人になってしまう。 でも、つぐみは土方を拒むことはできない。 土方を愛しているから。  
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