第二十三章 試衛館大学

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あれから6年。 土方と愛人関係になってからもう6年。 何度となく土方を拒絶しようとした。 この関係が良いなんて思ったことは一度もない。 倫理に反すること。 それが"不倫"なのだから。 しかし、今日もつぐみは土方を拒絶することは出来なかった。 荒々しく抱かれた後、寝息をたてる土方の横顔を眺める。 この人を嫌いになれたらどんなに楽なのだろうと、いつも思う。 土方が妻に気持ちがないのは知っている。 しかし、戸籍上でも世の中の目から見ても、認められた関係は自分ではない。 つぐみが大きく息を吐き出そうとした時、土方の携帯がけたたましく鳴った。 「ねぇ、鳴ってるよ。」 携帯電話を取ろうとしない土方につぐみは声をかける。 「急患だったらどうするの?」 そう言われ、土方はようやく携帯電話に手を伸ばした。 「はい。はい?自殺未遂?手首を切った?沖田先生は?」 一通りの話を聞き、土方は「行きます」と言い、携帯電話を切った。  
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