【夏の陽射し】

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   華織に怒られながらも何とか部屋を片付けられた翌日、仕事がある訳でもなく、雅人は相変わらずパンツ一丁で大の字になって過ごしていた。 「あ、暑い……水……」  呟きながら台所に目を向けるだけで動く気は毛頭ない。誰か身の回りのことをしてくれる彼女でもいればいいのに、と思う傍らで脳裏に浮かんだ華織の姿に天井を見つめ、瞬きを繰り返す。  何故、華織が。  心中に言って冗談で抱き寄せた感触を思い出す。  華織が暴れて半ばうやむやになったこともあり、その時は雅人自身、意識もしなかったが、子供だった当時とは明らかに違うことは確認せずともわかる。  当時、さほど変わらなかった体つきは間違いなく自分とは異なる。声をあげて笑いながらじゃれあった時は女を意識したりしなかったし、どちらかといえば同性の友達と接するのと変わらなかった。 「ほんのちょっと会わなかっただけなのにな……」  ぽつりと口元に言って、複雑な笑みが零れる。ほんのちょっと、とは言っても、七年も経てば嫌でも変わるものだ。  時の流れは見た目だけではない、気持ちも考え方も進む道すらも少しずつ変化していく。  雅人は右の手の平をぼんやりと眺め、華織のことを考えていた。  ただ、昔のようにじゃれあうつもりで引き寄せた身体は柔らかく、時間が経った今も感触が消えない。  人の温もりを知らない訳ではない。それでも雅人は久しぶりに人に触れたような気がしていた。  華織だけだった。  この海沿いの小さな町に別れを告げる最後の日に傍にいたのも、一週間前にふらりと戻ってきた時に一番最初に声をかけてくれたのも……。  それ以外の町の人間は見向きもしないといと言っても過言ではない。 「無理もない、か……」  七年前、あんな事件さえ起きなければ、今もこの町にいて都会に憧れながら平凡に暮らしていたのかもしれないと心に思い、瞳を閉じた。  あの日の記憶は、瞼の裏に眩むような眩しさを突きつけ、雅人をその時へ誘う。  ――七年前。  照りつける陽射しは若い二人を一層輝かせていた。 「ちょっ、つめた……冷たいってば!」 「華織っ、わ、馬鹿! バケツごと投げん……いってぇ!」 「ふん、華織様を甘く見ると痛い目にあうのよ」  幼い頃から遊び場だった砂浜で水をかけあいながら遊ぶ二人の声はそこら中に響き、狭い町民の耳に心地良く響き渡る。
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