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「由利(ユリ)っ、早く起きて支度しなさい!」
階下から、お母さんの怒鳴り声がする。その声で強制的に夢から現実へと戻された私は、寝ぼけ頭のままベッドから降り、欠伸をしながら部屋のドアを開けて、自分の向きから左側に位置する階段へと向かい、一階に降りた。
一階に降りると、リビングには向かわず洗面所へと行く。顔を洗い、髪をセットする為だ。
「おはよー……」
「おはよっ。朝ご飯冷めちゃうから早く食べてね」
顔を洗って髪も整えた私は、今度こそリビングに行き、リビングと隣接されたキッチンを慌ただしく行き来するお母さんに挨拶をした。お母さんは、動きを止めずに返事をする。
それに対して気にする事無く、私はリビングテーブルに視線を向けた。テーブルの上には味噌汁にご飯、焼魚といった典型的な日本の朝食が、私の分しか置かれていない。どうやら、姉さんとお父さんはもう済ませて出掛けたようだ。
「頂きます」
両手を合わせて小さく挨拶した私は、利き手で箸を持ちながらテーブルに置かれているリモコンで、テレビの電源を入れる。
テレビでは丁度、一件の事件を伝えるニュースが放送されていた。
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