黒猫と白猫物語

黒猫【二】

　
『──……続いてのニュースです。昨日午後八時四十七分頃、●●町××で男性が車の中で死んでいるのを、近くを通りかかった女性が発見、一一○番通報しました。駆け付けた警察が確認すると男性は、体の至るところに切り傷があり、顔は原型を留めていなかった模様です。車のバンパー部分には僅かな血痕とヘコみがあり、血痕は猫のものであると判明しました。また、車内や車の周りに男性の身元を証明する物は無く、警察では急いで身元を調べると共に、殺人事件として捜査を開始──……』

　××って……家の直ぐ近所じゃないか。物騒になったもんね。

　所詮は他人事なので、あまり気にもせずに朝食を食べ続けていると、身支度を整えたお母さんが大きな荷物を持って私の所に来た。

「じゃあお母さんも行くから、出掛ける時も夜も戸締まりちゃんとしなさいよ」

「夜もって……何で？」

「昨日言わなかった？　お母さんは友達と旅行、お父さんは出張、お姉ちゃんは友達の家に泊まるって。皆帰ってくるのは明後日だからね」

　……何も聞いてないんだけど。

鍵は置いておくからっ、と、テーブルに鍵を置いてお母さんはリビングを出ていき──やがて、玄関の扉が開閉する音が聞こえた。